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人生の記録

『サイダーのように言葉が湧き上がる』が沸き上がってほしい

この夏注目の劇場オリジナルアニメ映画といえば、そう

cider-kotoba.jp

サイダーのように言葉が湧き上がるですね。

通称「サイコト」。らしい

 

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いや~~デザインのすべてがかわいい。

 

ストーリーのネタバレをなにも踏みたくないひとは2~4を飛ばしてください。

 

どういう映画?

わたしは映画をけっこう観るんですが、上映前予告を思い返すと妙にプロモ期間が長かったような気がする。公開延期したんだっけ…?

→1年したらしい。つらいよ~

予告編の時点で、美しいビジュアル、ぜったいにイイに決まっている声かわいすぎ俳優杉咲花ちゃんの出演、ネバヤンのみずみずしい曲、好きそ~~~~~って思いながら観てた。

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監督は『四月は君の嘘』などのイシグロキョウヘイさん。わたしはまんがを原作としたTVアニメをあまり見ないのですが『四月は君の嘘』は音楽の力・画の力がすさまじく、本当にいいアニメでした。最終回、息止めて観ちゃうよね。

 

音楽は電気グルーヴのサポートメンバーこと、アニメ『ピンポン』など、すっかりオシャレ劇伴作家としても売れっ子になったagraphこと牛尾憲輔、それに主題歌のnever young beach。

どっちもチャカポコしたオシャレな曲をつくるので(雑な認識)「サイダー」「青春」みたいなワードとピッタリですね。

 

脚本は佐藤大。『エウレカセブン』など。アニメっぽくない文化圏からやってきてアニメっぽくない脚本を書く人。エウレカの暗喩的ドラッグ描写すごいんでフラッシュバックしない人は観てください

→なんか結果として佐藤大が書いた部分はあんまり残ってなく、イシグロ監督がだいたい書いた様子。でもなんとなく佐藤大の空気あるよ

 

ストーリーは「俳句」がモチーフ。ドにわかだけど現代俳句や短歌も読むのが好きなので、このへんも結構期待値上がりポイントだった。

作品タイトルも俳句である。なんか結果的に最近の激長作品タイトルっぽさもあり文化はめぐるものである…って感じ

 

どんな話?

他人とコミュニケーションをとるのがニガテな俳句少年とマスクをつけたコンプレックス少女のボーイミーツガール。

基本的にショッピングモールと主人公らの家のみでストーリーが展開する。なんだか邦画っぽいスケールだが「アニメだからスケールでかいことしなきゃ…!」みたいなのなくて見やすく感じた。

 

上で「予告編から気になってた」とは書いたがストーリーに期待してたかというと正直そうでもなく、それは”むやみにスケールでかそう”に見えたからなんですけど、その印象は(わたしにとっては)いい意味で裏切られたのでよかった。予告作った人はちょっとだけ反省してほしい

 

途中までは正直言うと「こんなにキャラの人数いるか…?」とか思った(まあ観終わっても「もうちょっとまとめられたのでは」とは思わなくもない)けどいろんな人の力をちょっとずつ借りて収束していく感じでよかったね。

あれ以上キャラごとの役割をまとめると「怒涛の伏線回収」感が出過ぎるかもしれないな~。このへんの塩梅ってホントに難しいな~と最近思う…そもそも出過ぎてるとイヤな感じするのってわたしだけか…?

 

ボーイミーツガールって今どきどうなのか

個人的にはべつにそうは思ってないんですが、まあ言いたいことはわかる。

この作品も「恋愛要素がないと出資できない」という話になって入れることになり、当時はかなり憤ったという話がありました。

そこからどのように納得のいく形で「ラブストーリー」になっていったか、について。「恋愛するかどうかではなく主人公らの自己を確立する物語とした」といった形でクリアしたとのこと。

でもコレって別に不思議なことではなくて、恋愛…というか人間の深い関わりってそうですよね。

 

作中での実際の描写がどうだったかというと。

恋の発展の仕方が「一目惚れ」でも「やなやつ!」でもなく「SNSでつながっていいねの送りあいで惹かれていく」っていうのがアニメっぽくないし現代的でよかった。

これが意外とオタクほど馴染むのではと思った。おれたちオタクはSNSのほうが本音を書いているわけだし…

主人公はTwitter(みたいなSNS)に俳句という名のむき出しの心を創作物の形で晒している。それを全部いいねされたら好きになるに決まっているのである

あまりにもわかるし、本質的な恋の営みっていうか自己肯定感が育まれる過程だなと思った。

 

認められなかったアーティスト、創作物を肯定して光を当てた人物がめぐりめぐって肯定されていくような話、コレがホントに好きなんだよな。ホントに好きなんですよ……

これは主人公らの二人のほかにもう一組のカップルにも当てはまるが、いや~いいですよね。

 

正直監督夫妻もちょっと頭をよぎる。ご夫妻はふたりともクリエイターですが…

ていうか監督が妻の仕事とかセンスのことなんのてらいもなく褒めまくってて好感度高すぎる

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ヒップホップの初期衝動

終盤、MOROHAのライブみたいなシーンがあった。*1ポエトリーをリーディングしているのでまあそりゃそう。

と思っていたら脚本にまつわる解説で「俳句は日本語ラップの始祖である」という観点から俳句をモチーフにした、という話が出てきた。なるほどなー

 

そういうことを言い出すのはもちろんいとうせいこうである。

作中では主人公が作った俳句をその友人が勝手にタギングしている。俳句はヒップホップ!

※落書きは犯罪です

 

どうでもいいけど登場人物がめちゃくちゃ歩きスマホするのだけ若干気になった。不良のキャラが大暴れするのはべつにいいんですが善良な市民はあんまり歩きスマホしないでほしい…

 

ビジュアルデザインが良すぎ 

キャラデザは公私ともにパートナーである愛敬由紀子さん。女の子が映るシーンがアイカツスターズ!っぽい。影色の色相のズラし方とか…*2

プロップデザインとか服のデザインもかなり”ぽい”。ホントにかわいい、本質的かわいさ…

 

画面全体のビジュアルデザインもアイスタのCDジャケットっぽいし…

 

そう、ビジュアルが全カットデザインしてるようなビジュアルですごい。

光が星(★)の形のフレアで光っている。星型のフィルターかましてるようなイメージ?もちろん実際にはこんなんなることはありえないがアニメだしかわいけりゃオッケー!という思い切りがいい。

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#11「美術背景 中村千恵子さん」 - YouTube

 

美術が鈴木英人風だとアガるってもんよ

アニメでこういうわたせせいぞう・鈴木英人風の処理の背景って、近年のデザイン志向アニメではかなり定番化してきているように思う。

今作は直接的に『FOR YOU』から発想し、オマージュした様子。

 

とはいえ正直『つり球』のファンとしては毎度つり球を思い出してしまう。ファンなので…

 

実際、表現自体は絵画・デザイン界にはあったものだけど『つり球』以降ドッと増えた気がする。

なんというか、「アレってTVアニメでもできるんだ」と知らしめた、みたいな意味で、我々ファンが思ってるよりアニメ業界にとってエポックメイキングな作品だったのではないか?と最近思っている。 

つり球のファンブックにて、美術監督さんが「かなり挑戦的な試み」「大変だった」と仰っていたような覚えがある。今増えてるってことはこの10年で色々ツールやメソッドが進化したのかな。*3

 

ちなみにつり球も人前に立って喋るとどもって赤面してしまい、パニックになると溺れるような感覚に陥ってしまう少年が主人公。近いものがあるのでサイコトが気に入った人には絶対観てほしい。これはこの記事っていうかわたしの人生のサビです。

anime.dmkt-sp.jp

 

最近明確にこれ系のオマージュだったアニメといえば、大滝詠一『君は天然色』をEDに起用し正式なコラボなどをしていた『かくしごと』ですが

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原作・久米田康治先生はデビュー当時からずっとこの辺の影響を受けたイラストを描かれていたので(わたしは世代的に久米田イラストからわたせせいぞうを知ったって感じでしたが…)

本人がどう思っているかはわかりませんがファン的には念願のビジュアルデザインによるアニメ化になりました。

(『絶望先生』は背景デザインという意味ではわりと普通だった印象。それ以外がそれどころではないくらいアバンギャルドでしたが…)

 

ここまで書いてて思い出したけどそういえば『かってに改蔵』のOVA(2011)が「原作のタッチを完全再現する(絵柄の変遷とかも含めて)」というふざけた作りだったのでかなりわたせせいぞうな背景だった。まあこれはなんか動機が違うっていうか…

 

とはいえやはり表現や技術はどんどん進化しているのでサイコトはいよいよ「ここまできたなー」感がある。キャラデザ(色)との馴染みとか、デフォルメの大胆さとか、どこも妥協せずフルで実線で描いている感じとか。ホントにかわいい。

 

 

サイコトチャンネルオモロすぎる

間に何度か紹介したが公式チャンネルがガチのマニア向けで面白すぎる。クリエイター、その志望者、観たほうがいい。

 

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監督話うますぎんか???こんなのタダで観ていいのか?????

わたしはアニメ監督などのクリエイターより代理店やメーカーと仕事することのほうが多いんですけどこんなにちゃんとしたメソッドで喋ってくれる人ほとんどいないよ(マジでこの世って何!?!?)

部下のこと、関わった人のこと、めちゃくちゃ褒めるし…何…この人と仕事したいんだが…?

 

監督はドラムをやっていたらしく、コンテの割り方とか作画の詰め方をBPMで話しててめっっっっちゃくちゃわかる。になった。わたしはこんなちゃんとした理論をもってやっているわけではありませんが…

最近ホントに「映像の仕事って音楽経験必須じゃない…?」って思う機会が多くて…やっとけばよかったなって思っている……

 

佐藤大さんとの団地団つながりで大山顕さんが参加してた話笑った。ショッピングモール監修とは一体……

でもマニアにしかわからないレベルで給水塔の形とか監修してくれるのたしかに超ありがたいな。森羅万象、何に対してもオタクはいるものです

 

観てくれ

観てくれ!!!!

*1:監督がオマージュしたものは全然違う作品らしい。すみません。観てないけどヒップホップモノのドラマらしいので多分近い感じじゃないだろうか

*2:動画内で「主人公の姉妹と花園きららのデザインがカブっている」という話が出て笑った

*3:サイコトの美術もめちゃくちゃ大変だったって言ってたのでただの根性かもしれない…